潜在成長率
GDP(国内総生産)には名目GDPや実質GDPといった実際のGDPと、潜在的なGDPの2つがあり、そのうち潜在的なGDPの前年比伸び率を「潜在成長率」と呼びます。潜在的なGDPとは、一国がモノやサービスを生産するために必要な各生産要素を、それぞれ過去の平均的な水準で供給した場合に実現できると推計されるGDPです。中期的に持続可能とされる経済活動の規模のことで、いわば一国の経済の基礎体力(実力)を表す推計値です。
潜在的なGDPを構成する生産要素は①資本投入、②労働投入、③全要素生産性(Total Factor Productivity、TFP)、の主に3点です。資本投入は企業や政府が保有する設備(資本ストック)の量、労働投入は就業者数と就業時間を乗じたもの、TFPは技術革新による生産効率を表します。この3点の寄与度の和が潜在成長率になります。
潜在的なGDPを引き上げることは、実際のGDPを中期的に増加させることにつながります。また、潜在的なGDPを推計することで、実際のGDPとの差から一国の経済状況を把握するとともに、実際のGDPの維持または上昇に向けカギとなる生産要素を探ることに役立ちます。不景気による設備投資の削減、人手不足、機械の陳腐化による生産性の低下等が続けば潜在成長率は伸び悩み、実際のGDP成長率も中期的に抑制される可能性があります。ここで、例えば企業による新しい機械の導入(資本投入の増加)を通じAIやIoT技術の利用が拡大(TFPの向上)すれば、実際のGDP成長率の将来的な拡大につながることが期待されます。
ただし、潜在的なGDPや潜在成長率はあくまで「潜在」的な概念で、客観的に観測できるものではありません。分析の際は、調査・研究機関によって定義や前提条件、用いるデータ、推計方法等が異なることに留意する必要があります。