通貨の国際化
ある通貨が国際化するとは、貿易や金融などの国際取引において、価値尺度、決済手段、支払準備として使われるようになることです。通貨の国際化を進めると、貿易取引において、自国通貨建て決済が広がり輸出入業者の為替リスクが軽減されます。また国際金融取引において、自国の銀行の調達が、潤沢な国内預金や中央銀行の流動性供給があるため有利になります。更に、他国の要人の資産凍結など非常に実効力ある外交手段を持てます。頻繁にあることではありませんが、やられる側からみると、手段を握られているだけで大きな脅威です。
一方で、世界中の投資家がその国の通貨建ての金融資産を持つということですから、金利や為替相場は外国の要因を受けやすくなり、国内の金融政策や通貨政策の運営は難しくなります。時として大量の資本流出入が起こるため、個々の商業銀行がしっかりしたガバナンス構造とリスク管理能力を持ち、金融システム全体としても、盤石な監督体制とセーフティネットを持たなければなりません。
経常取引の過不足を埋めるのが資本取引ですから、両者はコインの表裏のようなものです。貿易決済だけ国際化して、投機筋に振り回される資本取引は国際化しないというのは成り立ちません。もちろん、2010年頃の人民元のように、非常に強い人民元先高観に惹かれて、資本取引における不自由さを承知の上で金融資産として人民元保有が進んだことはありました。しかし、これは長期的に持続可能な国際通貨の姿ではありません。国際通貨には資本取引の自由が伴ってなければなりません。