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イベント情報

2024年11月5日(火)
脱炭素についてのェビナー「アジアの脱炭素をどう加速させるか~サステナブルファイナンスの新たな取り組み」を開催いたしました。資料はこちら。

基軸通貨

国際通貨の中でも中心的な地位を占める通貨を基軸通貨といいます。今日では米ドルです。貿易も金融取引もドル建てが多く、各国の外貨準備もドル建てが最大です。
基軸通貨は、通貨価値への信認と利便性の2点について、他の通貨に勝っている通貨が自然にこの地位に着きます。信認と利便性とは、為替相場や金利が予測不可能に乱高下せず、売買したい時、常に取引相手がみつかる安心感があることです。
通貨のこの条件を満たすには次の実態的な要素が必要です。
第1に、その通貨を擁する国の経済規模と金融市場が大きいです。第2に、大きいばかりではなく質も大事です。強さと規律を備えた金融機関が市場参加者の主流を占め、為替相場や金利などの価格形成の透明性が高いです。独立した金融監督者と中央銀行がシステム全体の守護者として存在します。第3に、この体制が誰からも侵略されないで守り通せる強い軍事力を持ちます。こうした多くの条件を満たすのは、今の世界では米国以外ありません。
基軸通貨をひとつ決めると、基軸通貨国以外にも利益があります。A、B、C、Dの4か国がお互いに輸出入をする世界を想定しましょう(通貨もABCDとします)。貿易決済をすべて、各国間の通貨交換で行うとしたら左図のようにA-B、A-C、A-D、B-C、B-D 、C-Dの6通りの通貨交換が起こります。ここでAを基軸通貨として、必ずどの通貨も一旦Aに交換してから他の通貨に交換するとどうなるでしょうか。右図のようにA-B、A-C、A-Dの3通りの通貨交換に集約され、各々の交換量は3倍になります。つまり市場の流動性が増し、全員がこの経済メリットを享受するのです。このため、相対的に条件を満たしている通貨が自然に基軸通貨の地位につくようになります。

軸通貨なしの世界                                           Aを基軸通貨とする世界