経常収支の調整
国際収支を構成する項目のうち、経常収支は経済政策を運営するための重要な指標の一つとされ、国際的な政策協調を目的とする国際会議やIMFなどの国際機関でも重要視されています。ある国が経常収支赤字を累積させて経済困難に陥ったり、逆に黒字を累積させ、貿易相手国で保護主義政策が実施されたりする時には、こうした不均衡を是正することが政策的な課題となります。
経常収支不均衡の是正には、主として①為替相場の変更と②国内マクロ経済政策の調整、の2つの手段があります。
① 為替相場が変化すると国内と海外での財の相対価格が変化し、その国の国際競争力に影響を与え、ひいては経常収支に影響すると考えられます。例えばある国が自国通貨の切り下げを実施すると輸出価格は下落、輸入価格は上昇し、経常収支赤字の改善が可能になります。
② 国内景気が過熱し経常収支が赤字となっている場合、中央銀行は金利を引き上げたり、財政支出を削減することによって内需を抑え、輸入を抑制することができます。逆に国内景気が悪く経常収支が黒字となっている場合、金利の引き下げや財政支出の拡大を行うことで内需を喚起し輸入を増やすことができます。
ただし、輸出入が為替相場の変更に敏感に反応するとは限らないこと、また、マクロ経済政策も経常収支の調整だけを目標とすることが難しいことから、実際には経常収支の改善策はそれほど簡単ではありません。